技術委員会第3分科会では、皮膚に貼付する粘着テープの刺激やその評価方法に関して検討を重ね、これまで@からEのテーマを設定し取り組みました。
@透湿度の異なるフィルムによる皮膚刺激の違い
A粘着テープを繰り返し貼付することによる皮膚粘着性の変化と皮膚刺激
B粘着テープによって剥離された角質細胞の評価方法
C粘着剤に使用されるモノマーの刺激性
D粘着テープの貼り方による皮膚刺激性の違い
E保湿剤によるテープ刺激の低減効果
昨年まで「テープ剥離方法による皮膚刺激の違い」というテーマを立ち上げ、皮膚刺激が低減されるテープ剥離方法について検証しました。
文献調査より、皮膚と水平に剥離する剥離角度0°は剥離時の痛みは弱いが、皮膚粘着力が高く皮膚の表皮剥離が多く見られたため180°剥離が望ましい1)と報告されている一方、別の文献では剥離角度0°は剥離時の痛みが若干弱く皮膚粘着力は高いが、角質剥離面積率は低くなった2)という報告が認められています(共にポリウレタンフィルムドレッシング材を使用)。
そこで市場に流通している一般的なサージカルテープや救急絆創膏を7種類、低刺激性を特徴としたサージカルテープ9種類を集めて前腕内側部分に貼付し、剥離時の痛み、皮膚粘着力、角質剥離面積率を評価基準としてテープの剥離方法と皮膚刺激の関係について多面的に評価しました。
結果、全てのサンプルで剥離時の痛みと皮膚粘着力は0°剥離の方が180°剥離より明らかに大きくなりました。一方角質剥離面積率は、一般的なサージカルテープや救急絆創膏では0°剥離の方が180°剥離より若干小さく、低刺激性を特徴としたサージカルテープでは剥離角度によって大きな差は無く、それよりもテープによる差の方が大きい結果となりました。よって0°剥離の方が角質剥離量はやや小さいものの、皮膚粘着力を抑えてテープ剥離時の刺激を過度に起こさない180°剥離の方が特別な剥離技術も必要としないため、推奨できる剥離方法だと考えました。
次に市販されているドレッシングテープ(ポリウレタンフィルムドレッシング材)を6種類集めて引き続き剥離時の痛み、皮膚粘着力、角質剥離面積率からテープ剥離方法と皮膚刺激の関係性について評価しました。
皮膚粘着力は0°剥離の方が180°剥離より大きく、角質剥離面積率は0°剥離の方が180°剥離より小さい結果となり、これまでの検証結果と同じ傾向が得られました。しかし痛みの基準テープと比較した剥離時の痛みはこれまでの傾向とは異なり、剥離角度による差がありませんでした。そして痛みの基準テープを使わず、同じ製品内で0°剥離と180°剥離で比較すると180°剥離の方が痛みは強い製品もあり、これまでの比較結果と相反することも確認されました。
この結果については基材の違いが影響する可能性はありますが、本検証のみでは明確な結論付けができず、剥離時の痛みは皮膚粘着力、角質剥離面積率と相関しない結果となりました。
我々はこれまで180°剥離を推奨する方が、各種テープにおいて特別な技術を必要とせず安定した剥離力で剥離できると推察していました。しかし、今回検証したドレッシングテープのように、テープの種類によっては1つの評価項目だけで皮膚刺激性を判断することが難しく、用途や目的に応じて剥離方法を選択する必要があると考えております。よって本年度より、貼付時間や貼付面積、形状、貼付部位など検討条件を追加することで、皮膚刺激を低減する剥離条件を多面的に検討していくことを考えております。
他の分科会に比べて少ない人数で活動していますが、自由に発言できる分科会となっております。少しでも粘着製品に関心をお持ちの方がおられましたら、参加のご検討をお願いいたします。
引用文献 | |
1) | 高柳智子、吉田智里、福田純子. ポリウレタンフィルムドレッシング材の剥離角度が皮膚に及ぼす影響. 日本看護学会誌. 2006, Vol. 16, No.1, p.30-39 |
2) | 岡知美、徳村文男. フィルムドレッシング材の適切な剥離方法に関する検討. 医療機器学. 2011,Vol. 81, No.5, p.369-374 |
委員長 (株)共和 | |
副委員長 東洋化学(株) | 副委員長 ピップ(株) |
委員 イチイ(有) | 委員 河合産業皮膚医学研究所 |
委員 ニチバン(株) | 委員 日皮協 |
委員 ピアック(株) | 委員 ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株) |
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